昨日のブログに引き続き、今回もYouTubeライブ『スノーボーダー向け何でも相談室』からの話題です。
毎週木曜日21時からやっていますので、都合合えばぜひご参加ください。
⇩アーカイブ視聴もできます⇩
■経験や蓄積が増えた
ライブ配信中に何度か質問を頂いたのが、
スノーボードの進化について
「最近のボードは進化していると聞いたのですが、昔のボードと何が変わったのですか?」
「最近はボードの性能が上がっているので・・・」
という感じで、スノーボードの進化について話題になることがあります。
確かにNEWモデルが発売されると「進化した」と言ってプロモーションするメーカーさん多いです。
ただ、あくまでも個人的意見としては「進化している」というよりは、これまでの経験や蓄積によって設計のバリエーションが増え「変化した」という感じかなと思います。
進化と言うと「すぐれたものに発展する」という意味がありますけど、別に過去のものが悪いということはないかなと。
■選択肢が増えた
過去のモノが悪くて、新しいモノが優れてるのか?
例えば、スノーボードに使っている材料に関しても、基本的に中身は「木」ですから。これは大昔からあるもので、当然ですが進化しているわけではないですし。
ソール材は昔のものと比べて滑走性が上がるように工夫されているし、エッジも錆びないような工夫はされていますが、それがボードの進化につながっているかといえばそこまで大きな変更があるわけでもないですし。
あとはグラスシートやトップシートも昔からあるものと比べて「別のしなり方を出るようになった」とか「軽くなった」などの変化はあっても。
じゃあ過去のものがダメなのかというわけではないですし。
昔ながらのしなり方の方が目的に合っている場合もあるし、軽いのがいいとも限らないですし。
ということを考えると、
古い=良くない
というわけではなく。
結局は組み合わせが重要で、その組み合わせ方がこれまでの経験によって蓄積され変化してきたということ。
だから、進化したというよりかは「選択肢が増えた」という感じですね。
■新作至上主義ニッポン
私は以前から「スノーボードのNEWモデル」に疑問を持っていまして。
少しの変化を加えただけで何でもかんでも、新しくなったとか、進化したというのはどうかと。
例えば、去年のモデルから不等圧のバランスを少し変化させて「○○が進化したNEWモデル」として出しても。
人によっては去年のボードの方がよかったという人がいるわけであって、必ずしも新作が良いとは限らない。
ただ、こと日本に関しては「新作至上主義」というのがあるらしく。
「新しくないと売れない」
というマインドが染みついているとか。
よく例えられるのが「家」ですね。
日本では新築に一番価値があり、完成した瞬間から価値が下がり、年数が経過すと急激に価値が落ちていく。
だから、使い捨てのように家を建て替えて「NEWモデル」として販売し続けなきゃいけないという。
ただ、欧米でよくみられるのは、古くなれば古くなるほど家の価値が上がると言います。
例えば日本では築100年なんていうと「大丈夫?」「崩壊しそうで心配」となるけど。
欧米では築100年というと「100年も持つ丈夫な家」として、長年変わらない安心感につながり、むしろ価値が上がるといいます。
ようするに、新しいモノより長持ちするものや定番に価値が生まれることがあるそうです。
もちろん全てがそうというわけではないでしょうし。そもそもの作りが違うとか、景観を重んじているとか色々と理由はあるようですけど。
日本ほどの新作至上主義は珍しいようです。
■良いモノを崩す必要あるのか?
この流れは家だけでなく、様々なところにあると思う。
だからこそ、私はスノーボードの仕事を長くやっていても、いつも疑問に思うことでした。
こんなことを言うと他メーカーさん批判のように聞こえてしまいますが、別に否定したいわけではありません。
特に大きなメーカーさんの役割はそうやって業界を活性化させるという使命や会社を維持するてめでもあるので私と同じような考えではダメなのはわかります。
でも私としては、少し変化をさせて毎年のように「NEWモデル」としてボードを販売するのは、単に買い替えを促すための手法であり。
良いモノをわざわざ変えてまで販売する必要はないと思っています。
実際に、私が作っているFOSSIL SNOWBOARDの「NATURAL」に関しては、
ブランドを立ち上げた15年前に設計してから一度も変化させていません。
それは15年経ったいまも不満が無いし、このボードを変化させて話題作りをしようなんて気がまったくないからです。
とはいえ、15年も変わっていないと「進化してない」と表現する人もいるでしょう。
でも、良いと思うモノを崩してまで変化させることを「進化」と言うのでしょうか?
■変わらない安心感
私は小さな変化をさせて毎年の買い替えを促すよりも。
良い物を長く使ってもらおうという考えをブランドを立ち上げるときから持っていました。
15年前にブランドを立ち上げて以来、デザインも変えていないし。設計に関しても、よほどのことが無い限り、良いモノができたら変更することはありません。
それは、デザインが変われば古く見えてしまうし、設計が変われば自分が持っているものが古く感じてしまうから。
そして、これは最初から意図していたわけではありませんが。ありがたいことに、最近うちのボードがメルカリなどの中古市場で高値で売買されるのをよく見かけます。
以前、10年前に発売した「NATURAL」(当時90,000円で販売)が、35,000円で売れているのを見たときは流石にビックリしました。
いま手元に10年前に購入した何かしらのボードがある方。
そのボードが定価の3/1以上の値段で売れると思いますか?
それ以外のモデルでも定価の半分以上の価格で売買れているのも見かけます。
もしかしたら、
「長年変わらない安心感」を持ってくれる人が増えてきたのかなと、思っています。
もちろん全てにおいて「新作」を否定しているわけではありません。
ただ、本当に新作がいいのか、定番の方がいいのかは見極めることも大切かと思います。
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